FLUENTE店長の四方山話

自転車について徒然につづっています。

シートピラーのネジの補修

お客様よりシートピラーのナット部の補修を承りました。

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一本止めタイプシートピラー上部のアルミ製ナット部のネジが毟れたように無くなっています。 画像ではネジが残っているように見えますが、実際には殆どネジ山は残っておらず、ボルトを通しても手で抜く事ができる程です。

一番簡単にシートピラーを使用できるようにする方法は、オリジナルと同じ径のより長いボルトとナットを用意して、シートピラーのヤグラを固定できるようにすることです。 しかし、使用されているネジ径のためにボルトとナットを入手することができません。

依頼されたシートピラーには、M7×1.0mm サイズのボルトが使用されています。
M7 サイズのネジ径は、JISでできる限り使用しないように規定されているために、汎用品のボルト&ナットが製造されておらず、ネジ専門の問屋からでも入手できません。
一本止めタイプのシートピラーの構造を考えると、入手可能なM6 サイズにサイズダウンするのは強度的に不安がありますし、M8 サイズにサイズアップしようとすると、ボルトの頭がシートピラーのザグリに収まりません。

汎用品のM7 サイズのボルト&ナットは入手できませんが、M7 サイズの雄ネジを立てるダイスと雌ネジを立てるタップは入手することができます。 同じように、雌ネジを補修するためヘリサートと呼ばれるものも入手可能なので、今回は、ヘリサートを使用してオリジナルのナット部のネジを補修することにしました。

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オリジナルのナット部に新たにヘリサート用の下穴を加工して、ヘリサート用のタップで雌ネジを立てます。
立てた雌ネジにステンレス製の菱形の断面をしたコイルを挿入します。
挿入したコイルの内側が新たな雌ネジになります。

オリジナルのボルトの精度が怪しかったので、ダイスを通して補修してから出来上がったナット部にはめ合わせてみます。

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ヘリサートにより、精度の良いステンレス製の雌ネジが補修されたナット部と補修したオリジナルのボルトは、非常に滑らかな手ごたえではめ合わされました。

オリジナルのアルミ製の雌ネジよりも強度、硬度共には遥かに高くなり、補修されて精度が向上したボルトとの組み合わせで、締め付けトルクもネジの耐久性も向上しています。