FLUENTE店長の四方山話

自転車について徒然につづっています。

当世ハブ事情 2

前回の記事で、馴染みが出たハブをオーバーホールして球当たりを追い込むと、殆ど抵抗を感じないスルスルとした感触に仕上がると書きましたが、シマノの9000と6800のハブでは、球当たりの調整方法が変わって、球当たりを追い込む調整が出来なくなりました。

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図のように、調整可能な球押しは球押し保持間座に保持され、球押しと球押し保持間座は40本のスプラインが噛み合うことで球押しの位置決めをしています。
球押し保持間座は、ハブシャフトの切り欠きに嵌ることでハブシャフトに対して位置決めされています。
これにより、球押しは9°毎にしか位置を変えることができなくなっています。

ハブの球当たりを追い込む作業では、球押しの位置の調整を9°よりも遥かに小さい角度で行う必要があるのですが、この形式の調整方法では、球押しを9°毎に調整してたまたまベストな位置に固定できた場合のみ、ギリギリまで追い込んだ球当たりに調整できることになります。
実際には、球押しを指先で軽く締め込み、そこからスプラインの溝1本分緩めたところに調整して固定するしかありません。
この、球押しをスプライン1本分緩めたところがベストな球当たりの状態かというと、殆どの場合は僅かに締まり過ぎの位置になっているでしょう。

誰が調整しても、同じ球当たりに調整することができますが、逆を言えば、球当たりを追い込む能力が有る人でも、ハブの個体差により決まっている球当たり以上の調整はできないということです。
従来の調整方法では、自分では調整できなくとも調整する能力の有る人に依頼することで、最高の状態に調整されたハブの感触や使用感を体感できる機会を持つことが出来たのに、その機会を奪うことに成り、優れた調整方法と言えるかは疑問です。

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最近のカンパとフルクラムのハブでは、
写真のように、球押しを調整する部分のハブシャフトとのネジ部に割りを入れ、小ネジで割りを締めることで球押しを固定していて、小ネジを緩めて球押しを調整することが出来るようになっています。
この方法では、従来のハブコーンレンチを使用する方法よりも、容易に球当たりを追い込む調整が可能になっていて、能力の差による仕上がりのレベルの違いは出るものの、従来の調整方法よりも仕上がりの差はかなり小さくなっているはずです。

私は、シマノの調整方法の設計思想よりも、カンパ/フルクラムの調整方法の設計思想の方を好ましく感じています。