FLUENTE店長の四方山話

自転車について徒然につづっています。

フロントフォーク考

イメージ 1


イメージ 2


お客様より、ロードレーサーの安定性とハンドリングについてご相談を受けました。

有名ブランドの700Cのホイールを採用したロードレーサーで、そのブランドの一番小さなサイズに乗られています。
小柄な方なので、サイズとしてはピッタリの大きさです。

試乗やサドルを持っての押し歩きなどでチエックしてみたところ、手放し運転ができず、コーナリング時のステアリングの反応が悪く、タイトターンがスムーズにできません。
ヘッド角に対してフォークオフセットを大きくとっていて、トレールが短過ぎるのが原因のようです。
トップのサイズが短いのを補って、フロントセンターを稼ぐための処置だと思われます。

安定性を考えて前後の荷重バランスを取るためにフロントセンターの寸法を大きく取ったのでしょうが、フォークオフセットの寸法だけで対処した形になっていて、結果として安定性とコーナリングの両方を損なってしまっています。

解決方法としては、キャスター角に見合ったオフセット寸法のフロントフォークに交換するのが良いのですが、フォークオフセットを少なくすることになるので、前後の荷重バランスを考えて延ばしてあるフロントセンターを短くすることになり、結果として前後の荷重バランスを悪化させることになってしまいます。

フロントセンターの寸法を設定するのに、キャスター角とフォークオフセットがバランスのとれたものにしてあれば、
安定性とコーナリングに問題が出なかったはずです。

今回の場合は、キャスター角に対してフォークオフセットが大き過ぎた、小さなサイズのフレームとしては珍しい例になります。

カーボンフォークになってから、多くのメーカーがフォークオフセットを一種類しか用意しなくなり、フレームサイズが変わってもキャスター角が一定だったり、反対にフレームサイズによりキャスター角が大きく変えてあってもフォークオフセットが一種類しか用意されていなかったりしています。

フレームサイズが変わってもキャスター角を一定に設定した場合は、小さなサイズのフレームほどフロントセンターが短くなり、前輪荷重が大きくなり過ぎます。
フレームサイズが変わると、キャスター角を変更してフロントセンターの寸法を調整していても、フォークオフセットが一種類しか用意されていないと、小さなサイズのフレームほどトレールが大きくなり過ぎ、安定性やコーナリングに支障がでますし、極端な場合は、ダンシング時に自転車を左右に振るとハンドルが左右に切れてしまう自転車もあります。

カーボンフォークは型にカーボンを貼り込んで作るので、オフセット寸法を変えたフロントフォークを作るためには、オフセット寸法ごとの型が必要になります。
型代は高価なので、一種類の型で作りコストを抑えるたいとメーカーとしては考えるのかもしれませんが、その結果として小さなサイズのフレームにバランスが良くないものが目立っています。

カタログのスケルトン表から読み取ることが出来ますが、カタログにフロント周りの寸法を殆ど載せていないメーカーもあるので、その場合は実車で確認するしか方法がありません。
カタログには全ての寸法を表記してもらいたいものです。

それよりも、コストの削減だけを考えたようなフロントフォークのデザインを改めてバランスのとれたスケルトンにしてあれば、どのサイズを選んでも問題がな 無くなるのですが。
もちろん、小さなサイズから大きなサイズまでバランスのとれたスケルトンにするために、フォークオフセットの寸法を数種類用意しているメーカーも少数ながらありますから、 小柄な方はそのようなメーカーのモデルを選ぶと安心です。