FLUENTE店長の四方山話

自転車について徒然につづっています。

ヘッドベアリングあれこれ

ヘッドパーツのベアリングは、近年すっかりシールドベアリング化が進みカップ&コーンタイプのヘッド部品を扱うことも少なくなって来ました。

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ヘッド部品のベアリングは、上下方向の荷重だけで無く横方向の荷重も支える必要があります。
カップ&コーンタイプのヘッド部品でもベアリングに対して斜め方向に角度を付けたボールレースを当て、上下方向も横方向もどの方向からの荷重にも対応できるデザインになっており、シールドベアリング化されてもボールレースに斜め方向の接触角が付いているアンギュラーコンタクト型のシールドベアリングが採用されています。

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一部のヘッド部品には、アンギュラーコンタクト型のシールドベアリングでは無く、ラジアル型のシールドベアリングを採用しているものも見られます。

ラジアルベアリングは、支える軸に対して放射状(ラジアル)方向の荷重を支えるためのもので、ヘッド部品と使用すると、横方向の荷重のだけに対応していることになります。
ヘッド部品はラジアル方向、スラスト(軸)方向どちらの方向からの荷重にも対応できる構造でなければならないので、深溝型のラジアルベアリングを採用してスラスト方向の荷重にも対応できるようにしています。

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写真は深溝型ラジアルボールベアリングの断面の構造です。
ボールレースとボールがバラバラに離れないようにボールレースに溝が付けられていて、ボールの横方向を囲むようにボールレースが当たるようになっています。
この、ボールの横方向を囲むように当たるボールレースの部分を利用しスラスト方向の荷重を負担させることでヘッド部品として成り立たせています。
本来、ラジアルベアリングはスラスト方向の荷重を支えることを考慮していないので、ラジアルベアリングを自転車のヘッドベアリングとして単体で使用することは、機械設計としては誤りです。

MTB全盛期に最強と持て囃されたヘッド部品やイタリアの大手メーカーのヘッド部品に、深溝型のラジアルベアリングが採用されています。

イタリア大手メーカーのヘッド部品は、アンギュラーコンタクトベアリングの代わりにラジアルベアリングが採用されている構造です。
この場合、アンギュラーコンタクト型のベアリングを採用した場合よりもフォークコラムとフレームのベアリングのホルダーが高い精度で仕上られていないとヘッド部品の動きに支障が出やすいのですが、調整を重ねてもスムーズな動きが得られ無い事が多く、加工精度に疑問が残ります。
また、本来支えることを考慮していない、スラスト方向の荷重の方を多く支える必要があるために、ベアリングの寿命が短くなっているようです。

最強と持て囃されたヘッド部品は一生物と言われていましたが、上下のワンにラジアルボールベアリングを圧入しただけのデザインなので、一生保つかどうかは疑問です。